心に残る写真集【熊谷元一】

熊谷元一さんの写真集はいつ眺めても心が和む。
岩波書店の日本の写真家シリーズの17番。1997年の出版。
戦後間もない長野県は阿智村に暮らす人々の日常を撮影した写真集だ。

写真にも明るくないし、昭和49年の生まれの僕が懐かしいと思う時代でもない。それでも、表紙のこの写真を見て、惹き込まれた。

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給食の風景だが、見ての通りお椀と堅そうなパンが献立。トレーなどなくお椀の下に敷いてあるのは新聞紙。来ている服も恐らくは母親の手縫いの服で、中に着ているセーター?は袖口がほころんでいる。それでも美味しそうにパンに齧りつく坊主頭の少年。何が、というわけではないのだがいつまで眺めていても飽きない。

中身は小学校の日常風景や信州の山々を背景に農作業に精を出す農婦。放課後の遊びや家の手伝い。嫁いで来た若いお嫁さんの風景など、飾る事のない日常のみだ。当然の事ではあるが、補正などの技術は一切ない時代の写真なので、全てがいわゆる白黒写真で構成されている。

熊谷さんは1909年(明治42年)に生まれて教師の傍らアマチュア写真家として活躍した方で、四年前の2010年に101歳でお亡くなりになった。著名なフォトグラファーではなかったはずだが、こうも温もりのある写真を数多く残されたことは素晴らしいのひと言に尽きる。

Posted by Yuichi Seshimo STAGEWORKS.inc


 

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